無題

電車が通って、雑然としていたホームががらんどうになったのを見て、電車を人攫いのようだと思った
向精神薬を飲んだ後、ベランダの手すりに座って空を仰ぎ見た時、自分がまるで息継ぎに喘ぐ魚のようだと思った
こういうくだらない感性があるかぎり、まだわたしは人であって、まだ死ねないと思った
人知れず枯れる花を見かけて何も感じなくなった時、その時には死のうと思う

人と成りて

成人式なんて行かなくていいと思っていたけれど、最近Twitterで振袖を着たかわいいおんなのこをよく見る。振袖なんて着なくていい。前撮りなんかしなくていい。お金がかかるから。親は金銭面で助けてなんてくれないし。友達なんていなかったし、それに、不細工だから。それは中学生の頃から心から思っていたけれど、振袖を着てきれいに笑う同級生の写真や自宅に届くパンフレット、たくさんリツイートされている投稿などを見て、あぁ、着てみたいな。とほんのり思ってしまった。

黒レースの手袋をして。髪はアップスタイルにしたくない。巻いて下ろして池田菜々ちゃんみたいにヘッドドレスをしたいな。黒をベースにした振袖がいいな。花柄は嫌。

わたしはいつもこうだなとほんとうに思った。そんなこと、どうだってない。いらない。と突っぱねても、心の底ではしぬほど求めているんだ。本当は。

本当は、おかあさんに抱っこしてほしかった。殴ってなんかほしくなかった。本当は、友達が欲しかった。いじめられたくなんかなかった。本当は、誰かに話しかけて欲しかった。机に座って俯いていたくなかった。後悔してから自分の気持ちがわかるんだ。いつもこうだな。

本当は振袖、着たかったみたい。高校卒業してから決めるものだから、もう間に合わないな。

みじめだ。